血管内皮細胞が産生する血管運動調節因子、すなわち、内皮由来収縮因子(EDCF)および内皮由来弛緩因子(EDRF)のバランスの制御破綻が血栓形成や動脈硬化の進展に関与する証拠が提示されるなど、これら因子の生理学的および病態生理学的意義に関する論議は盛んである。我々はラットを用いて、EDRFの一つである内皮由来過分極因子(EDHF)が、より径が小さい動脈では内皮由来一酸化窒素(EDNO)を上回る役割を果たし、かつ、その作用が平滑筋細胞膜電位過分極によるL型カルシウムチャネルの抑制に加えて収縮蛋白のカルシウム感受性を低下させる可能性があることを示唆した。また、雌性ラットにおいて、エストロゲン欠乏が内皮依存性弛緩反応、特にEDHFに依存する弛緩の障害をもたらすことを明らかにした。更なる分子機序の解明には遺伝子操作が容易なマウスを用いた研究が期待されるのであるが、その血管運動反応性を測定する基本的技術としてのマイクロベッセルパーフュージョンシステムが十分に有用であることを確認し、この後の研究の発展の礎石をおいた。
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