研究概要 |
内向き整流カリウムチャネル(Kirチャネル)は多種類のメンバーが存在するファミリーからなり、カリウムイオン(K^+)を選択的に透過させるチャネルである。一次構造上で、N末端、C末端ともに細胞質内にあって、膜貫通領域を2つ持っており、その間にチャネルポア(穴)を形成する主な領域となっているH5とよばれる互いに相同性の高い領域が存在している。Kirチャネルはこのサブユニットが4つ集まって1つのポアを作る4量体として存在している。その機能として、細胞静止膜電位を深める作用、静止膜電位を安定化させる作用、細胞の興奮を抑制する作用、K^+の輸送、インスリンの分泌など多彩な機能を持っている。このKirチャネルファミリーの1つであるKir4.1lK_<AB>-2について、既に脳や網膜グリア細胞に発現してPDZドメインを持ったSAP97と結合して存在していることを報告したが、免疫電顕の手法を用いて、網膜ではKir4.1/K_<AB>-2が水チャネルのAQP-4と共存していることを見い出した。このことは、以前よりK^+の輸送と水の輸送が協調的におこなわれているのではないかとされてきたが、実際もK^+と水の出入りが協調している可能性が高いことが判明した。さらに、Kir4.1/K_<AB>-2は胃の壁細胞に限局して発現していることをin situhybridization,Northern blot,Western blot,immunohistochemistryで確認し、また、このチャネルの阻害薬であるBa^<2+>が胃酸分泌を抑制すること、他の種類のKチャネルであるカルシウム依存性Kチャネルや電位依存性Kチャネルの阻害薬には酸分泌を抑制する作用がなかった。一方、パッチクランプ法によって胃壁細胞のKチャネルを測定し、壁細胞にはKirチャネルが発現しており、このチャネルの性質はKir4.1/K_<AB>-2にきわめて類似していることを見い出し、Kir4.1/K_<AB>-2が胃壁細胞に発現して、酸の分泌に直接関与していることを明らかとした。
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