昨年度、我々のグループによって新たに同定された完全長のMT4-MMPを他の4種類のMT-MMPsと比較すると、アミノ酸の相同性が他のメンバーに比べて低いことから、独自の機能を持つことが予想された。特に、カルボキシン末端を比較すると、他の4種類は膜貫通構造である疎水性アミノ酸配列とそれに続く約20アミノ酸からなる細胞内ドメインを持っているのに対して、MT4-MMPは細胞内ドメインに相当する部分を欠いていた。このように、カルボキシン末端が疎水性配列で終わる場合には、この部分で細胞内プロセシングをうけてGlycosyl phosphatidil Inositol(GPI)を結合し、GPIを介した膜結合蛋白となる可能性が考えられる。そこでMT4-MMPがGPI蛋白質である可能性を、アイソトープ標識したエタノールアミンのアンカー部分への取り込みと、phosphatidylinositol-specific phospholipase C(PI-PLC)によるGPI部分の切断によって蛋白質部分が培養上清へのリリースされるかどうかで調べた。コントロールとして用いたuPA受容体がエタノールアミンを取り込み、PI-PLCで可溶化されるのと同様に、MT4-MMPも取り込みと可溶化が観察された。カルボキシン末端領域をMT1-MMPのそれとスワップさせるとこの様な現象は見ることが出来なくなった。以上のことから、MT4-MMPはMMPのファミリーの中で始めてのGPI型MT-MMPであることが明らかとなった。また、MT4-MMPのカルビキシン末端の配列はGPIアンカーへのシグナル配列であることも明らかになった。
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