研究概要 |
本年度の研究においては、まず我々が遺伝子クローニングに成功したマウス新規受容体型チロシンキナーゼmRor1,mRor2の詳細な発現解析を行った。その結果、mRor1,mRor2はいずれも神経系を中心に発現が認められるが、その時間的・空間的制御は異なることが明らかとなった。即ち、mRor2が発生過程の神経系において広範に発現し生後早期に発現が消失するのに対し、mRor1は発生過程の神経系において限局した領域に発現が認められ、生後もその発現は持続する。更に、マウス胚性癌細胞株P19ECの神経分化誘導に伴っても、mRor1,mRor2はin vivoでの発現動態を反映した誘導様式を呈することが明らかとなった。さらに、mRor1,mRor2は発生過程において、神経系以外にも心臓、肺等においてその発現が検出されることが示された。また、連鎖解析の結果、mRor1,mRor2遺伝子はそれぞれ第4,13染色体にマップされ、その近傍に原因遺伝子の同定されていないマウス変異体の遺伝子座dyl(dysgenetic lens),pcd(Purkinje cell degeneration)が存在することが見出された。現在これらのマウス変異体遺伝子座とmRor1、mRor2遺伝子との関連を解析している。また、本年度の研究においてmRor1,mRor2遺伝子のノックアウトマウスの樹立に成功した。いずれのノックアウトマウスも生後チアノーゼを呈し、新生児致死に至ることが明らかとなった。特に、mRor2ノックアウトマウスに関し詳細な解析を行い、このマウスにおいて心室中隔欠損、肺胞拡張不全及び四肢、尾の短小化が見られることを明らかにした(論文投稿中)。また、四肢の短小化は長管骨遠位側における骨化不全によることを見出した(論文投稿中)。現在このマウスにおける神経系の解析を行っている。
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