研究概要 |
本研究においては、まず我々が遺伝子クローニングに成功したマウス受容体型チロシンキナーゼmRor1,mRor2の発生過程及び生後における発現解析を行った。その結果、mRor1,mRor2は発生過程において神経系をはじめ様々な組織・器官において発現が認められるが、その時間的・空間的発現制御は異なることが示された。発生過程において、mRor1は肢芽近位、鰓弓、心臓及び神経系の限局した領域に、mRor2は肢芽遠位、尾芽、体節(皮筋板)、肺、心臓及び神経系(前脳、中脳)に発現が認められる。次に、受容体型チロシンキナーゼmRor1,mRor2の機能を明らかにする目的で、これらの遺伝子ノックアウトマウスの樹立・表現型解析を行った。mRor1,mRor2欠損マウスはいずれも新生児致死に至るが、それらの表現型は大きく異なることが明らかとなった。mRor1欠損マウスでは外観上の異常は認められず、進行性の呼吸不全により生後約24時間以内に死亡した。一方、mRor2欠損マウスは生直後より努力様呼吸と顕著なチアノーゼが認められ、6時間以内に死亡した。mRor2欠損マウスにおいては、発生初期に尾、体節の形態異常が、発生後期あるいは新生児期では骨格形成不全、肺機能不全、心室中隔欠損が認められた。骨格系においては、前肢・後肢の遠位部に著しい形成不全・骨化不全が認められ、さらに肋骨の癒合と椎骨の変形が認められた。mRor1欠損マウスにおいては、骨格系の異常は認められなかったが、mRor1,mRor2両遺伝子の欠損マウスにおいては、mRor2欠損マウスで認められた骨格系の異常が増強されることから、mRor1も骨軟骨形成過程に関与することが示唆された。このような解析結果から、mRor1,mRor2は当初予想されなかった骨軟骨形成過程においても重要な役割を担うことが明らかとなった。
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