研究概要 |
本研究はバンド3蛋白質の構造と機能を蛋白質構造解析を主体として明らかにしようと試みている研究である。この方法は可溶性酵素の研究で普遍的に用いられた研究方法である。可溶化が難しく疎水性であるポリトピック型膜蛋白質についても、この方法は有効である筈である。しかしながら、実験的な取扱いがなかなか難しくこの方面での研究は余り進んでいない。 我々は、バンド3蛋白質の陰イオン交換反応に関して、分子構造と機能との関連について興味を持って研究を続けており、リジン残基の関与/ヒスチジン残基の関与/酵素反応速度論上で推測されていた内向き型・外向き型構造の実験的証明/膜貫通ペプチドの種類と性質などに関して成果を発表してきている(J.Biol.Chem.(1992)267,19211-19217;J.Biol.Chem.(1994)269,1918-1926;J.Biochem.(1995)118,1192-1198;Cell.Mol.Biol.(1996)42,1025-1040;J.Biochem.(1997)122,577-585;J.Biochem.(1998)124,509-518:J.Biol.Chem.(1998)273,28286-28291;Mol.Cell(1998)2,495-503)。特に、最近1-2年は膜蛋白質のドメインについて、「疎水性膜貫通領域」と「親水性膜外領域」という旧来からの概念に加えて、この二つの概念では分類できない新しいカテゴリーに属するドメインがあることを提唱し、それを支持する実験的証明に力を注いでいる(Cell.Mol.Biol.(1996)42,1025-1040;J.Biochem.(1997)122,577-585;J.Biochem.(1998)124,509-518;J.Biol.Chem.(1998)273,28286-28291;Mol.Cell(1998)2,495-503)。 バンド3蛋白質を含め様々なポリトピック型膜蛋白質について構造と機能解析は世界各地で精力的に行われている。その中で、我々の研究は膜貫通領域の取扱いに関して優れており、他の蛋白質に応用されている。また、今回、我々が提唱した膜貫通領域に関する新しいカテゴリー分類は国際シンポジウムで大きな反響を得ている。 このような点で本研究は独創的であり、本研究の成果は次の2点で意義があると考えている。即ち、1)陰イオン透過の分子機序の解明 2)ポリトピック型膜蛋白質構造と機能に関するモデル研究方法、である。
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