研究課題/領域番号 |
10470040
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
清水 憲二 岡山大学, 医学部, 教授 (10037286)
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研究分担者 |
藤原 田鶴子 岡山大学, 医学部, 助手 (70108166)
小田 慈 岡山大学, 医学部, 助教授 (50160875)
大内田 守 岡山大学, 医学部, 助教授 (80213635)
郭 春鋼 岡山大学, 医学部・附属病院, 医員
堺 明子 岡山大学, 医学部, 助手 (60205698)
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キーワード | p107遺伝子 / 遺伝子内欠失 / チロシンホスファターゼ / 癌抑制遺伝子 / ヘテロ接合性消失 / AKT遺伝子 / 活性化変異特異的診断 / 末梢血遺伝子診断 |
研究概要 |
【緒言】本研究では、独自に開発した遺伝子解析法を用いて、個々の癌および末梢血などの非侵襲的検体の遺伝子異常を広範に検索し、癌化の機構解明と新しい癌の遺伝子診断法や早期発見法の確立を目的とした。 【方法】1,研究検体を確保するために、岡山大学腫瘍バンクを設立し、これまでに約1,000例の腫瘍ー正常組織対を収集した。2,マクロな遺伝子異常検出法としてInter-Alu Long-PCRゲノムスキャン法を,ミクロな遺伝子異常検出法として遺伝子全領域マルチSSCP法と蛍光標識マイクロサテライト(MS)解析法を開発した。 【結果】2の方法によりヒト腎癌における新しいLOH領域を発見した。この領域はRadiation Hybrid法によってヒト染色体14長腕にマップされ、更にこの領域のBACクローンを分離して、2種の癌抑制遺伝子候補を同定した。同じ方法によって、網膜芽細胞腫遺伝子(RB)群のp107遺伝子の初めての異常(遺伝子内領域の欠失)をリンパ球系腫瘍から発見し、前年度に報告していた。このp107遺伝子の90kbpに渡る全構造を決定し、エキソン22個を含むこと、上記の遺伝子内欠失はエキソン5個を含む15kbpの領域がAlu配列間の組み換えによって生じたことを発見した。また最近、ヒト染色体3p21領域に局在する新たな癌抑制遺伝子候補を発見し、エキソン25個を含む遺伝子全体構造を解明すると共に、それが全く新しいチロシンホスファターゼをコードし、ある肺小細胞癌細胞株では1遺伝子座位の欠失と残っている遺伝子上に点突然変異があることを発見した。本蛋白質のアミノ末端側600アミノ酸領域はアポトーシス関連蛋白質ALIXやRHO標的蛋白質と高い相同性を示す。さらに、以前発見したマウスの活性化AKT遺伝子はcDNAの発現実験からUVやカルシウムによるアポトーシスを著明に抑制することを見いだし、報告した。また遺伝的不安定性を示す癌におけるその原因の追及に関しては、胃癌6例においてDNAポリメラーゼβ遺伝子の変異を共同研究によって見い出し、報告した。これらのほか、MS解析法により、頭頸部癌がヒト染色体13q33領域で高頻度の欠失を示すことを見い出した。この領域に局在する癌抑制遺伝子候補、ING1遺伝子の全体構造とプロモーター領域を解明し、3例の癌で癌特異的な不活化点突然変異を初めて発見した。末梢血診断に関しては、血中遊離DNAの解析によって膵癌患者の早期診断が可能なこと、原発癌よりも血中遊離DNAの遺伝子異常が増加している患者は遠隔転移を起こしやすいことなどを明らかにした。更に血中遊離DNAの超微量定量法を開発し、癌の進展や寛解によって変動することを確認し、また血中遊離DNAを用いたp53遺伝子の変異検索の系を確立した。
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