研究分担者 |
藤原 田鶴子 岡山大学, 医学部, 助手 (70108166)
小田 慈 岡山大学, 医学部, 教授 (50160875)
大内田 守 岡山大学, 医学部, 助教授 (80213635)
郭 春鋼 岡山大学, 医学部・附属病院, 医員
堺 明子 岡山大学, 医学部, 助手 (60205698)
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研究概要 |
【目的】本研究では、新規に創案した遺伝子解析法及び従来のマイクロサテライト解析法を用いて、ヒト癌における遺伝子異常を広範に検索し、新規遺伝子診断法や癌早期発見法を開発することを目的とした。 【方法】1,平成7年度設立の岡山大学腫瘍バンクに現在まで約1,200例の腫瘍-正常組織対を収集した。2,新たにAlu-PCRゲノムスキャン法と遺伝子全領域マルチSSCP法を開発し、欠失や点突然変異などを検索した。3,従来のマイクロサテライト(MS)解析法により癌における染色体欠失領域を広汎に検索した。4,末梢血中遊離DNAを用いた定量的及び定性的遺伝子診断法を確立するための基盤的研究を行なった。 【結果】新しい方法によって我々が以前MSI+の大腸癌などで発見した転写因子E2F4遺伝子内(CAG)13リピート数の癌特異的な変異は、その後多くの続報で確認された。又、その成因がミスマッチ修復遺伝子hMSH3の変異によることを発見したことが本研究の初期の大きな貢献であった。E2F4が作用するRB関連のp107遺伝子の初めて異常(部分欠失)をB-リンパ腫細胞で以前見い出していたが、この成因が約15kbp離れているAlu-配列間の疑似相同組み換えによることを発見した。更に新開発のゲノムスキャン法により、約30%の腎癌において染色体14q24-31にLOH領域を発見し、その領域に2種の癌抑制遺伝子候補を特定した。また多くの癌においてヘテロ接合性の消失(LOH)が見られる染色体3p21.3領域に発見した癌抑制遺伝子候補HD-PTPは、新しい群のチロシンホスファターゼであり、様々な信号伝達やアポトーシスの制御蛋白と相互作用する可能性が見い出され、国際特許化した。更に、頭頸部癌で染色体13q33-34のLOHが高頻度で起こることを示し、その部位に位置するING1遺伝子の全構造を解明すると共に、頭頸部癌検体3例において蛋白質の機能を失活させるような癌部特異的ミスセンス突然変異を初めて検出した。これはING1遺伝子が癌抑制遺伝子である初めての証拠となった。その他計7種の癌において計10種の癌抑制遺伝子候補を特定した。また3q26-27領域では癌遺伝子Bcl-6と類縁のPOZドメインを持つZn-Finger蛋白質を指令する新規癌遺伝子候補を見い出した。診断法としては、骨軟部腫瘍の融合遺伝子特異的分子診断法を確立したほか、末梢血中遊離DNAを従来の約1万倍の感度で定量する方法を確立すると共に、その中の癌特異的遺伝子異常(ras,p53遺伝子変異及び癌抑制遺伝子プロモーターのメチル化など)を高感度で検出する方法を開発した。これらは担癌患者の早期発見に有用な診断法となると期待される。
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