研究概要 |
活性酸素は生体を障害する因子であり、細胞の情報伝達の担い手である。活性酸素を消去する抗酸化機構は活性酸素を消去することによって恒常的に細胞の生理機能を維持している。グルタチオン(GSH)はこの抗酸化分子の中心をなす。更にレドックス制御を介して細胞の情報伝達を調節している。 本研究は膵β細胞の機能調節に及ぼすGSHの役割を明らかにすることを目的としている。本年度は次の3点について検討を加え新しい知見を得た。 (1)GSH合成の律速酵素γ-グルタミルシステイン合成酵素(γ-GCS)遺伝子の解析。前年度の活性部位を有する重鎖の解析に加えて、活性を調節する軽鎖のcDNAを調製して両鎖の発現をNorthern blotsで測定した。その結果、多くの酸化的ストレスに反応して両鎖の遺伝子発現が同時に起こることを明らかにした。次に、両鎖遺伝子のプロモーター領域の解析を行っている。即ち、両鎖の転写調節領域には、酸化的ストレスに反応する、TRE,MRE,AP-1,AP-2,SP-1,NF-κB等の結合部位を有していることを明らかにした。 (2)膵β細胞株MIN-6にγ-GCS重鎖のアンチセンスCDNAをリボザイムに結合させた構築物を導入して、持続的にGSH濃度を約50%に低下させる新しい細胞株を樹立した。前年度明らかにした低GSH下でのインスリン分泌増加の機構を更にATP合成の面から検討した。 (3)膵β細胞株β-TCに酸化的ストレスを加えると、低GSH下でも活性酸素を消去する機構が働く。その役割を担う新しい分子の同定を進めるとともに、GSHとの関連性を検討している。
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