研究概要 |
ヒトアポ蛋白(a)高発現トランスジェニックウサギ(TGウサギ)founder line(A01 line)を交配しF1ウサギを作製し、得られたF1ウサギの解析とコレステロール食投与の影響を検討した。このA01lineウサギの血清アポ(a)は〜1.8mg/dlであり、ヒトアポ蛋白mRNAは主として肝臓と腎臓に発現していた。肝では肝細胞に発現していることを免疫染色並びにin situ hybridizationにより確認した。血清中ではヒトアポ蛋白(a)はヒトと同様にpre-β部位に泳動した。80%のアポ(a)は血清中でLDLと結合し、ヒトにおけると同様にリポ蛋白(a)を形成していることが判明した。繁殖をくり返し、複数のTGウサギを得ることができたので、比較的低濃度の0.3%コレステロール食で16週間飼育し、大動脈とその主幹動脈、並びに冠状動脈病変について病理学的に検索した。大動脈、頚動脈、腸骨動脈おける病変の広がり(SI)は、コントロールウサギがそれぞれ16.8%,6.1%,3.4%であったのに比べ、TGウサギでは27.8%,12.3%,12.3%と有意に高く、TGウサギにおける動脈硬化促進作用が明らかであった。また、冠状動脈については内腔狭窄率を測定したが、コントロールウサギの19.4%の狭窄率に比し、TGウサギでは42%と有意に亢進しており、同様にヒトアポ(a)発現による冠動脈硬化促進作用が明らかであった。組織学的に、初期ではほぼ正常に見える内膜の内皮細胞下に、脂肪斑やプラークなどの動脈硬化巣では病変部の細胞外基質に一致したアポ(a)の沈着が見られた。現在、これらの病変形成機序を含め、詳細について検討を加えているところである。
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