研究概要 |
原発性肝癌である肝細胞癌(HCC)と胆管細胞癌(CCC)について、同時に肝癌発生、進展に関わる候補遺伝子を検索している。具体的には遺伝子変異の殆ど知られていないCCCではK-ras、p53遺伝子変異を、さらにHCCとCCCの両者においてCAリピートの長さを利用したマイクロサテライトマーカーによるLOHの部位を検索した。 <結果>CCCの8.7%にK-ras変異が検出され、GA変異が殆どで肝門部原発に多い傾向がみられた。p53変異は8.6%に変異を認め、変異形式は様々であったが、すべてpT4症例であった。両遺伝子の変異と予後・分化度・組織型との相関は認められなかった。HCCではinformativecaseの30%以上にLOHを認めたhot spot locusは32 lociあり、その存在部位は4q,8p=16q,6q=13q=17p,5q=16p,1p=9p=19pの順であった。32のhot spotのうち、18 lociは今回のスクリーニング用マーカーで新たに検出されたものであった。 <考察>CCCにおいてk-ras遺伝子の変異を示す症例は少なかったが,腫瘍の局在によってcarcinogenic stepが異なることが示唆された。一方,p53遺伝子の変異は発癌後期に起こると考えられた。hot spotが認められることからHCCの発生もしくは進展に重要な遺伝子変化を反映したLOHが存在することを示している。今回判明したhot spotに関連する癌抑制遺伝子としては、5q→APC,6q→IGF(監)R,8p→PRLTS,9p→p16,13q→RB,17p→P53などが候補遺伝子と考えられるが、1p、4q、16p、16q、19pに関しては対応遺伝子の報告がなく、未知の癌抑制遺伝子の存在が示唆された。
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