研究概要 |
基礎的データの蓄積のため、昨年と同様に肝癌の中で肝細胞癌(HCC)と肝内胆管癌(ICC)についてCAリピートの長さの違いを利用した216マイクロサテライトマーカーによるヘテロ接合性消失(LOH)を全染色体において包括的に検討した。(結果)LOHが高頻度な症例はB型肝炎ヴィールス(HBV)陽性で低分化、脈管浸潤、肝内転移が有意に多い傾向がみられた。染色体13q,16qのLOHは(HBV)陽性に6qのLOHはヴィールス陰性例に多く認めた。高分化型CCCでは4q,13qのLOHは低く、6qのLOHが多く見られた。これらから染色体6qのLOHはCCC全体の発生に重要なステップでるが、HBV感染例では3q,16qのLOHが重要であることが明らかとなった。戦中に使用された血管造影剤トロトラスト(ト)がICCの発生に大きな役割を演じているが、ト症ICCではp53のA→G transitionが多いが、非ト症例ではp53変異の頻度は少ないことが明らかとなった。ICCにおいてもLOH頻度はより悪性な症例に覆い傾向が見られた。染色体1p,6p,6q,9pのLOHはMassForming型ICCとHCCの発生と共通した変化であるが、1p36のLOHはICCに特徴的であることが明らかとなった。また、胆汁の下流域に発生した症例はK-ras変異が多く見られたことから、HCCとICCの発生初期ではは共通な発癌ステップが存在するが、より悪性に変化する際にことなった遺伝子変異が加わっていることが示唆された。
|