研究概要 |
原始神経管発生時に肝特異転写因子HNF-3βやHNF-6の発現が見られ,これらが重要な働きをしていることが示唆され、多くの転写因子が互いにnetworkを形成し,発生分化に重要な働きを行い(Clin Pathol:Molec Pathol 52:19-24,1999),肝細胞の最終分化段階でHNF-1αとそれを制御するHNF-4の発現が重要であることが明らかとなった(J Pathol 184:272-278,1998)。Rodentの未分化肝細胞癌、高分化肝細胞癌培養細胞株を使った.HNF-4、HNF-1αのtransfection実験では、これらの転写制御因子のtransfectによる培養細胞のphenotypeの変化は、それを受け入れる細胞によって異なることが明らかとなった。人においては、肝細胞癌と胆管細胞癌、そしてその両者の性格を合わせ持つ未分化癌の像が混在する混合型肝癌がある。この未分化細胞部分を株化し、HNF-4、HNF-1α強制発現を行った。理論上は肝細胞への分化が起こると期待されたが、これらの外来遺伝子の発現は認めなかった。細胞によっては,何らかの抑制因子が発現している可能性があり,その抑制因子の一因として,宿主側のmethylationが考えられる。肝癌細胞における脱分化は,肝特異蛋白のプロモターにmethylationがおこり、これらの転写因子が発現しなくなるために細胞や組織が分化が低くなる可能性がないかと考えている。また肝細胞癌の転移部には、E-cadherinのチロシン残基にリン酸化がおこっているという論文がある。我々は、高分化肝細胞癌で高発現、低分化肝細胞癌で低発現を示すチロシン脱リン酸化酵素を同定している。転写制御因子発現、接着分子、チロシンリン酸化、脱リン酸化酵素と肝細胞の分化を総合的に解析している。
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