研究概要 |
肝癌細胞分化にHNF-1αが直接機能することを示した(J Pathol 184:272-278,1998)。また未分化肝細胞株から自然分化した胆管細胞株においては、HNF-1を発現調節するHNF-4の発現がみられるが、その発現が細胞質内のみで核内には認められなかった。HNF-4の核内移行能の障害によりHNF-4のHNF-1α転写活性能が障害されたと考えている。このことからも肝細胞高発現転写因子の機能は、単にその核蛋白の発現量のみでなく、核内移行能の消失など機能面やmethylation、acethylationなどのDNAや蛋白修飾などが転写制御機能に影響をおよぼすことを明らかにした(シンポジウムV、転写因子と疾患。第88回日本病理学会総会、東京、平成11年4月8日)。 以前は肝臓特異転写制御因子といわれていたものが、今日では、他の臓器にも発現すること、たとえばHNF-3βは、膵臓のβ細胞分化にとって重要なPDX-1遺伝子発現を制御すること、糖尿病の一部には、HNF-1α、HNF-4の遺伝子変異と関係するものがあり、膵分泌腺細胞に肝細胞高発現転写因子の1つであるC/EBPβを強制発現させると肝細胞へtrandifferentiationを起こすなどの報告がある。 多くの肝臓高発現核蛋白が同定され、それらが互いにnetworkを形成して、肝細胞分化を誘導し、維持していると考える(Hayashi Y at al.,J Clin Pathol(Molec Pathol)52(1):19-24,1999)。個体発生のもっとも初期に発現するHNF-3βとその発現調節するHNF-6が骨髄幹細胞から肝臓幹細胞への分化などとの関わりを解明することが今後の再生医療、肝細胞移植にとって最も重要と考える(病理と臨床 17:272、1999)。
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