幹細胞が幹細胞たりうる分子機構を解析するために、マウス胚性幹細胞(ES細胞)と始原生殖細胞(PGC)を材料に研究を行った。 一つは、植物から唾乳類にいたるまで細胞分化に大きな役割を有していると考えられているMybの機能を破壊することにより、未分化なES細胞に分化が誘導されるかどうかの検討を行った。この目的のために、mybのDNA結合ドメインとDrosophilaのEngrailedのrepressorドメイン、そしてエストロゲンのリガンド結合ドメインの融合タンパクを用いた。この融合タンパクは、エストロゲンの誘導体であるタモキシフエンの存在下でMybのドミナントネガティブ変異体として機能するので、conditionalにMybめ機能を抑制するとこが可能である。この融合タンパクを発現したES細胞にタモキシフェンを加えたところ、分化の誘導は認められなかったが、細胞周期の停止ならびに特定の細胞接着因子のdown regulationが認められた。現在、この細胞接着因子がMybの標的遺伝子であるかどうかの解析を行っている。 PGCに発現するTNAP遺伝子座にLacZ遺伝子をノックインしたマウスからPGCを純化し、PGCにおける遺伝子発現の解析を行っている。現在までに約6000のexpression tagの同定を終え、いくつかの遺伝子タグが非常に高頻度で発現していることを見いだしている。現在、ES細胞における発現タグの解析が進行中であり、近い将来にES細胞とPGCにおける発現の異同を検討する。
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