研究概要 |
ヒトマクロファージスカベンジャー受容体(MSR-A)I型のリコンビナント蛋白(アミノ酸残基131-451)を抗原としてMSR-A欠損マウスを免疫し、5種類のモノクローナル抗体(MH1,SRA-C6,SRA-D10,SRA-E5,SR7X-F8)を得た。イムノグロブリンサブクラスは何れもIgG1,κであった。Westernblottingによって、何れの抗体もヒトMSR-Aと特異的に反応することが確認された。 剖検および生検によって得られたヒトの正常ならびに病的組織を用いて、酵素抗体間接法による免疫染色を施行すると、いずれの抗体も肺胞マクロファージ、肝のクッパー細胞、赤脾髄のマクロファージ、リンパ節の洞内マクロファージなどの組織マクロファージに陽性で、脳の血管周囲マクロファージ(Mato細胞)も陽性であった。血液単球は陰性であったが、培養3日目から陽性となり、単球の分化に伴って発現が認められた。他方、皮膚ランゲルハンス細胞やinterddigitating cellsなどの樹状細胞は陰性であった。また、粥状動脈硬化巣におけるマクロファージ由来の泡沫細胞にも陽性所見を呈した。 こられの結果から、今回作製した5種類の抗MSR-Aモノクローナル抗体は、組織マクロファージに対する新しいマーカーと考えられ、粥状硬化をはじめマクロファージが関与する種々の病態の解析に有用と考えられた。次年度以降には、各抗体によって認識されるエピトープの解析とともに、抗体による受容体機能の阻害効果を検討する。さらに、種々の病的組織に於けるMSR-A陽性細胞の分布について検索を進める予定である。
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