研究概要 |
マクロファージスカベンジャー受容体(MSR-A)欠損マウスを免疫動物に利用することで、ヒトMSR-Aに対する5種類のモノクローナル抗体(MH1,SRA-C6,SRA-D10,SRA-E5,SRA-F8)を作製した。Western blottingによって、何れの抗体もヒトMSR-Aと特異的に反応することが確認されたが、このうち、SRA-E5については、マウスマクロファージ細胞株(J774A1,RAW264.7)由来のマウスMSR-Aとも交叉することが、Western blottingによって確認された。 ヒト組織の検索から、これらの抗体は、肺胞マクロファージ、肝クッパー細胞、赤脾髄のマクロファージ、リンパ節の洞内マクロファージなどの組織マクロファージに陽性所見を示したが、皮膚ランゲルハンス細胞やinterdigitating cellなどの樹状細胞は陰性であった。また、in vitroの血管モデルによる解析から、内皮層を通過した単球は、培養1日目からこれらの抗体に陽性となり、単球の分化に伴ってMSR-Aの発現が増強した。種々の動物組織との交叉反応の検索から、MH1、SRA-D10、SRA-F8はサル、ウシ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコのマクロファージと反応し、これらの動物のMSR-Aをも認識すると考えられた。さらに、SRA-E5は、これらの動物に加えて、ウサギ、ハムスター、ラット、マウスとも交叉し、動物種間に共通のエピトープを認識するものと考えられた。 今回作製した抗MSR-Aモノクローナル抗体は、組織マクロファージに対する新しいマーカーと考えられ、粥状硬化をはじめマクロファージが関与する種々の病態の解析に有用と考えられた。さらに、各種の動物モデルにおけるMSR-Aの役割解明にも有用なことがわかった。
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