研究概要 |
本年度得られた成果は以下の通りである。1.C.B-17系マウスはBALB/cのコンジェニック系であるにも拘わらず、BALB/cと異なり好酸球産生機構に欠陥があり、そのために髄液好酸球増多が誘導できず、結局、脳内で発育中の広東住血線虫(Angiostrongylus cantonensis,Ac)を殺滅できない。つまり、C.B-17はAcに対してBALB/cよりさらに感受性が高い。2.C.B-17に致死量のX線照射を施した後、C57BL/6(低抗性系統)あるいはC.B-17の骨髄細胞を静脈移入して骨髄キメラマウス(C57BL/6→C.B-17,C.B-17→C.B-17)を作製し、Acに対する感受性や病態を調べた。キメラ状態はH-2typingにより確認した。感染C57BL/6→C.B-17では、20日後に髄液好酸球レベルは60%に達して30日まで持続し、30日後には有意な虫体の殺滅がみられた。また、感染後の体重減少も有意に抑制されており、マウスの生存率は80%であった。一方、C.B-17→C.B-17では骨髄、末梢血、髄液の好酸球増多は著しく軽微で、感染後29日までに全マウスが死亡した。つまり、C.B-17においても骨髄好酸球増多を誘導できれば、髄液に好酸球集積が起こり、脳内虫体の殺滅が可能であること、また、C.B-17の骨髄由来細胞は病態の悪化に関与すること、が判明した。3.BALB/c-nu/nuにX線照射後、抗Thy1.2抗体で処理したBALB/cの骨髄細胞で再構築し、その後にBALB/cあるいはC57BL/6の胸腺細胞を数回移入してT細胞キメラマウスを作製(BALB/cT→nu/nu、C57BL/6T→nu/nu)、Acを感染させた。T細胞構築マウスは対照のnu/nuに比べ髄液好酸球数が多かったが、脳内虫体回収数には差がみられなかった。一方、Ac感染後BALB/cT→nu/nuは明らかな体重減少を示したのに対して、C57BL/6T→nu/nuでは減少が抑制される傾向があり、BALB/cのT細胞が病態発現に関わっている可能性が示唆された。しかし、今回作製されたC57BL/6T→nu/nuの脾リンパ球には、C57BL/6由来のH-2Kb ^+CD4^+リンパ球は1%未満しか認められず、キメラ状態の改善が課題と考えられた。
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