食細胞内寄生細菌は環境により表面の糖鎖抗原をシアル化させたり、糖鎖を追加修飾し、巧みに表面構造を変化させる。その中で細菌の多糖体中の糖鎖リガンドと食細胞の受容体の解析は古くからなされているが、細菌表層の蛋白および糖脂質と食細胞の受容体との関連は、結核菌等一部の菌種についてのデータしか集積されていない。細菌の外膜糖蛋白および糖脂質リガンドが食細胞増殖にどのように関連しているかを理解するため、細胞内寄生細菌の外膜の糖蛋白と糖脂質の構成を解析し、食細胞内寄生にこれらの分子がどのように関わっているかを解析することを試みた。研究初年度はチフス菌を使用し、この菌が表面のgalactosamineのポリマーを欠損した場合の上皮細胞との結合性を調べた。 その結果チフス菌の外膜蛋白であるompCが人の血液型物質と結合することがわかった。この結合は人のA、B、及びO型のいずれとも結合させることからompCが血液型のフコシール-ガラクトースを認識することが予測された。 この事実を確認するためompC欠損株を作成しこの株が血球を凝集する能力を失うかどうかを検討したが、ompC欠損株は血球凝集能が残っており組織侵入性も保持し、細胞内増殖性が残っていた。そこで鞭毛の欠損株を作成したところ鞭毛欠損株は血球の凝集能を失いさらに組織侵入性も失っていた。鞭毛が血球のどの物質と凝集をおこすかは未だ結論がえられていない。
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