研究概要 |
マルチコンポーネント型のRNDファミリー排出システムの作動機構と分子構造の解明のために,本年度は申請書の計画通り行い,下記の知見を得た. 1) 既に作成した抗体を用いた免疫沈降実験系の確立し,各コンポーネント間の相互作用を解析した.その結果,内膜コンポーネントとペリプラスムコンポーネントは常に結合した状態で存在すること,そして外膜コンポーネントには,他のコンポーネントと結合している分子と,結合せず外膜中に遊離している分子とが存在することが分かった.この結合型分子の存在は,マルチコンポーネント型の排出システムの機能発現を調べる上に大きなヒントとなる可能性を含んでいる. 2) 内膜コンポーネントのトポロジーの解析をさらに行い,本蛋白質が予想通り膜12回貫通型で,アミノ酸300個からなる巨大なループ構造を分子内に二個持つことを明らかにした.また,欠失変異体を作成することにより行った実験で,このループの内の一つが機能発現に必須のものであることが分かった.次年度はこのループの機能を本年度の研究により確立した上記1)の方法を用いて解析することを計画している. 3) 基質特異性の異なるポンプをコードする遺伝子間のDNA shufflingにより,基質特性の異なった変異体を作成する方法を確立した.次年度は,基質特異性の異なるポンプ蛋白質とのキメラ体の作成を進めて行きたい. また,4)鉄イオンは,細菌細胞の生理維持に必須である.この代謝過程で作られた産物の細胞外輸送に本排出システムが関与することが示唆される.そこで,1)-3)の研究を進めると共に,緑膿菌における鉄代謝の遺伝学的解析を行い,鉄代謝に関与する幾つかの遺伝子を同定した.このクローン化した遺伝子と排出システムの発現を明らかにすることを計画している.
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