腸管出血性大腸菌O157の病原性と薬剤耐性:粘着因子、溶血毒、耐性機序の解析

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10470073
• 研究機関: 新潟大学
• 研究代表者: 山本 達男 新潟大学, 医学部, 教授 (80095843)
• キーワード: 腸管出血性大腸菌 / EAST1様配列 / O157:H7 / O128 / 粘着 / エンテロヘモリジン / Anisodamine / ベロ毒素

研究概要

・わが国で1996年に腸管出血性大腸菌(O157:H7)による大流行が発生したが、この流行株はすべて 特異的なEAST1毒素遺伝子様のDNA配列を有していた。この特異配列を検出するPCRプライマーを作製した。
・腸管出血性大腸菌(O157-H7)は腸管上皮細胞に粘着すると細胞膜を伸長させ、伸長した膜で被われるようになった("めり込み"型粘着)。"めり込み"型粘着は、ベロ毒素を腸管腔に拡散させることなく 効率よく細胞内に作用させるのに都合がよい構造であると考えられる。一方、O157と同じ表層蛋白(インティミン)を使って腸管上皮細胞に粘着する腸管病原性大腸菌(EPEC)の場合には、上皮細胞 の微絨毛を伸長させ、伸長した微絨毛に被われるようにして細胞表面に固定された。ちなみに、EPEC は同素を産生しない。
・血清型O128菌が新規の線毛をもち、新しい粘着様式を示すことを明らかにした。この粘着様式を連鎖型粘着と命名した。
・腸管出血性大腸菌が産生するエンテロヘモリジンはヒト末梢血単核球に作用してサイトカイン(IL-1β)の産生を誘導した。TNF-αの産生誘導はしなかった。なお、エンテロヘモリジンを産生しないisogenic mutantの場合には、このようなIL-1βの産生誘導は認められなかった。
・血清型O128菌が大量のエンテロヘモリジンを産生することを突き止め、その全遺伝子配列を決定し、分泌蛋白が異なることを明らかにした。
・微小循環改善薬であるanisodamineが、ベロ毒素によるTNF-α(重篤化因子)の産生誘導を抑制し、ベロ毒素によるマウスの死亡を改善した。

研究成果

• [文献書誌] Yamamoto T. et. al.: "Status of emerging druing resitance in Shiga toxin-producing Escherichia coli in Japan during 1996 : a minireview (in Japanese)"Nippon Rinsho. 56. 260-271 (1998)
• [文献書誌] Zang H-M et al.: "Effect of subinhibitory concentrations of antibiotics on the production of enterohemolisin by enterohemorrhagic Escherichia coli O157:H7 (in Japanese)"J.J.A.Inf.D.. 73. 255-256 (1999)
• [文献書誌] 吉澤麻由子 他: "ベロ毒素によるTNF-αの産生誘導とカスパーゼ3の活性化および抗菌剤による抑制効果の検討"新潟医学会雑誌. 114(in press). (2000)
• [文献書誌] Yamamoto T. et. al.: "The sequence of enterohemorrhagic Escherichia coli and Yersinia pestis that are homologous to the enteroaggregative E.coli heat-stable enterotoxin gene: cross-species transfer in evolution"FEBS Lett.. (in press). (2000)
• [文献書誌] Yamamoto T. et. al.: "An atypical adherence pattern of enterohemorrhagic Escherichia coli strains belonging to serotypes O128:H12 and O128:H12"Acta. Med. biol.. 48(in press). (2000)
• [文献書誌] Taneike I. et. al.: "The enterohemorrhagic Escherichia coli (EHEC)-hemolysin genes of a Shiga toxin 1(Stx1)- and Stx2-producing, serotype O128 Escherichia coli strain with a greatest hemolytic activity"Acta. Med. Biol.. 48(in press). (2000)
• [文献書誌] Shimizu T. et. al.: "Helicobacter pylori transmission between a boy with duodenal ulcer and his father"Pediatr. Infect. Dis. J.. 18. 655-656 (1999)
• [文献書誌] Ohara T. et. al.: "Molecular epidemiology of intrafamilial Mycobacterium tuberculosis infections in Niigata, Japan."Acta. Med. Biol.. 47. 169-173 (1999)
• [文献書誌] 山本達男 他: "現代医学の基礎 1),感染と生体防御"岩波書店. 248 (2000)