研究課題/領域番号 |
10470074
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
菅村 和夫 東北大学, 医学部, 教授 (20117360)
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研究分担者 |
石井 直人 東北大学, 医学部, 助手 (60291267)
田中 伸幸 東北大学, 医学部, 助手 (60280872)
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キーワード | ヒト・パルボウイルス / 転写活性化因子 / アポトーシス / 慢性関節リウマチ / 伝染性紅斑 / 非免疫性胎児水腫 |
研究概要 |
ヒトパルボウイルスB19は伝染性紅斑、再生不良性貧血crisis、非免疫性胎児水腫の原因ウイルスである。近年、B19ウイルス感染と慢性関節リウマ(RA)の因果関係も疑われている。我々は、上記B19ウイルス感染症の発症機構において、B19ウイルスが有する転写活性化能と細胞障害性が重要であると推察している。本研究では、先ず、LACリプレッサー・オペレーターの制御下にNS1を発現誘導する実験系を用いて、B19ウイルス感染による細胞障害がNS1によるアポトーシスであることを明らかにした。赤芽球系細胞株であるK562ならびにUT7にLACプレッサーを発現させ、それら細胞にLACオペレーターに繋いだNS1遺伝子を導入する。これら細胞にIPTGを作用させると、リプレッサーが阻害され、NS1発現が誘導される。こようなNS1発現誘導に伴って、生細胞数が減少すると共に、DNAの断片化がみられた。すなわち、NS1発現によって細胞のアポトーシスが誘導されたことが分かる。これらのアポトーシスはBcl-2の過剰発現によって阻止された。しかし、従来知られているアポトーシスに働くcaspase1やcaspase3の阻害剤を作用させてもNS1誘導アポトーシスは阻害されなかった。従って、NS1誘導アポトーシスはcaspase1やcaspase3を介する経路とは異なる経路によるアポトーシスと考えられた。NS1の332番目のスレオニンをグルタミン酸に置換したK332E変異体や334番目のリジンをグルタミン酸に置換したK334E変異体はアポトーシス誘導活性を消失していたが、IL-6遺伝子転写活性化能は保持していた。従って、NS1によるアポトーシス誘導にはNS1の転写活性化能は必須ではないことが分かった。次に、NS1トランスジェニックマウスの作出を試み、Igプロモーターに繋いだNS1遺伝子を導入したマウスを作成できた。今後、同遺伝子導入マウスを観察し、免疫異常やRA様症状の有無を調べ、NS1とB19ウイルス感染症、特に、RAとの関係を追求する。
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