研究概要 |
NS1蛋白に欠損を持つ遺伝子組み換えウイルスを作成し感染細胞で解析した。dl12は、N端付近の12残基を欠失するが、温度感受性となり感染後期にすべてのウイルス蛋白の翻訳が特異的に阻害された。N110はC端側52%を欠失するが、後期蛋白の翻訳だけが特異的に阻害された。N110のNS1は核外輸送に欠損を持っていた。 WSN株NS1蛋白に加え、N端110残基(N110)、C端190残基(C190)、及び66-77残基目の欠損(d112)蛋白を大腸菌で発現・単離した。NS1蛋郷はA,、C-、及びG-キナーゼを用いてリン酸化した。ウサギ網状赤血球ライセートにウイルス感染細胞から精製したmRNAを添加、in vitroの翻訳に於けるNS1蛋白の機能を解析した。wt-NS1はin vitro翻訳系でNPとM1の翻訳を強く促進し、NS1の翻訳は弱く促進した。いずれのキナーゼもNS1蛋白をリン酸化したが、リン酸化により翻訳促進活性は有意に増加した。N110-NS1蛋白はin vitroで翻訳を促進し、C190-NS1蛋白は翻訳促進活性が欠損していた。 NS1のN端側131残基及び151残基の下流に自己切断活性を持つ17残基の2Aプロテアーゼ配列を挟んでCAT遺伝子を挿入したNS2ACATウイルスを作成した[NS(131)2ACAT及びNS(151)CAT]。NS(131)2ACATウイルスは非温度感受性で、NS(151)CATウィルスは温度感受性となり、マウスに対して高度に弱毒化された。感染細胞内ではNS1とCATの融合蛋白を発現した後、直ちに自己切断され成熟型蛋白となった。感染24時間後にはCAT蛋白の50%が培養上精中に検出された。マウス肺ではウイルスの僅かな複製とCATの発現が確認され、血中1gG抗体価の僅かな上昇が見られた。当該ウイルス感染マウスは、致死量のWSNウイルス感染に対し完全に感染防御がみられた。
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