研究概要 |
麻疹ウイルスEdmonston株は,ほとんどのヒト,サルの培養細胞で増殖するが,野生株はB95aなど限られたB細胞でしか増殖できない。これは,Edmonston株と野生株が使用する細胞受容体が異なるためである。点突然変異を導入した野生KA味のH蛋白をF蛋白と共発現したときにCos細胞,B95a細胞に生じる細胞融合の解析より,Edmonston株に対する受容体であるCD46とH蛋白の相互作用には481番目のチロシンが不可欠であるが,その位置のアミノ酸は野生株に対する受容体とは相互作用していないことを明らかにした。野生株に対する細胞受容体を同定するために,麻疹ウイルスエンベロープ遺伝子を発現した細胞とcDNAライブラリーの導入により受容体遺伝子を発現した細胞の間の融合を指標にしたexpression cloningを行なった。現在、陽性クローンを得るためにスクリーニングをさらに続けている。また、別のアプローチとして,野生株,Edmonston株の分泌型H蛋白質を合成し,これと結合できる細胞蛋白質をコードしている遺伝子をクローニングすることを試みた。現在、大量の分泌型H蛋白質を作製し、精製するシステムを作ることに成功している。さらに,麻疹ウイルス感染の動物モデルとしてヒトのリンパ球で再構築したSCIDマウスに麻疹ウイルスを感染させる系を開発した。Edmonston株,野生株いずれの感染によってもT細胞、B細胞の数が急激に減少することを認めた。
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