研究概要 |
麻疹ウイルス野生株とEdmonston株が異なるトロピズムを示すメカニズムを明らかにするために、種々の培養細胞に対する感染性を比較した。Edmonston株が調べたすべてのヒト細胞に感染したのに対し、野生株は一部のリンパ系細胞株にのみ感染した。次に、麻疹ウイルスのエンベロープ蛋白であるH蛋白とF蛋白をもつ水疱性口内炎ウイルスのシュードタイプウイルスを作製した。このウイルスが麻疹ウイルスのエンベロープ蛋白を発現していることは,麻疹ウイルスに対する抗体で染色した後、ウイルス粒子を電子顕微鏡で観察することにより確認した。このシュードタイプウイルスはレポーターとしてGFPをもっており,エンベロープ蛋白の働きで細胞に侵入すると、GFPが発現されて細胞は緑色に染まる。このシュードタイプウイルスは、野生株,Edmonston株のいずれのH蛋白をもつかでトロピズムが変わり,そのトロピズムはもっているH蛋白が由来した麻疹ウイルスのトロピズムと完全に一致した。このことから,麻疹ウイルス野生株とEdmonston株のトロピズムの違いは主に細胞侵入のレベルで決まっていることが分かった。そこで,野生株に対する細胞受容体を同定するために、野生株に感受性が高いB95a細胞のcDNAライブラリーを作製した。これを野生株非感受性細胞に導入し,野生株のエンベロープ蛋白をもつシュードタイプウイルスを感染させ、緑色に染まる細胞が認められた場合は、より少ない数のcDNAクローンを導入するという方法でレセプター遺伝子の発現クローニングを現在行なっている。
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