研究概要 |
インフルエンザウイルスは血球に結合するが、この結合にはHAのシアル酸除去が必要な場合がある。H1型ウイルスHA単独を細胞で発現させた場合にはニワトリ血球に結合できないが、ガチョウ血球には結合できる。HAとともにNAを発現させるとHAはニワトリ血球に結合できるようになる。HAを発現させた細胞にシアリダーゼ処理すると細胞表面のAHはニワトリ血球に結合できる。したがってHAのニワトリ血球結合にはシアル酸除去が必要である。 ウイルス感染細胞にNA阻害剤GG167を作用させると、ニワトリ血球は感染細胞に結合できない。GG167は細胞内に入らないことが証明されているから、HAとNAの相互作用は細胞表面でおこったものである。GG167存在下でウイルス感染細胞を放射能標識し、HAを免疫沈降し2次元電気泳動によりHAのシアル酸含有を検討すると、正常にウイルスが増殖する条件ではシアル酸は付加したままであったが、ゴルジ体でとまる処置をほどこした後、細胞表面に移行させたHAをみると、シアル酸は除去されていた。したがって何らかの機構で正常な場合はゴルジ体でHA,NAの相互作用は行なわれず、細胞表面において行なわれることが確認された。 HA,NAが細胞表面に移行し、M1が細胞膜下に移行してからウイルス粒子形成がおこなわれるので、HA,NAの相互作用はウイルス粒子形成と結び付く可能性が高い。ではなぜ細胞表面ではじめてHA,NAの相互作用はおこるのか。1992年のウイルスとWSNウイルスとでリアソータントウイルスを分離したところ、M遺伝子がWSN由来のウイルスはM1蛋白質が核に移行したまま細胞質に移行してこなかった。この現象とHA,NAの相互作用が協調していた。この結果からHA,NAの相互さようにはM1蛋白質が関与していることが推測された。
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