近年原発性免疫不全症の原因遺伝子が次々と同定、単離されている。その中で我々が単離したサイトカイン共通受容体γc鎖は免疫複合免疫不全症(SCID)の50%以上を占めるX連鎖SCIDの原因遺伝子である。最近γ鎖に会合し細胞内シグナル伝達に関わるJak3チロシンキナーゼの変異によってもSCIDが発現することが明らかにされている。従って、γ鎖、Jak3シグナル伝達経路に必要に関わる分子の中にはさらに新たなSCIDの原因遺伝子が存在する可能性が考えられる。本研究では、γc鎖/Jak3の下流の細胞内シグナル伝達経路に関わる機能分子、STAMならびにSTAM2のin vitroもしくはin vivo機能を解析した。STAM KOマウスは正常に出生するが、5週齢頃より体重が減少し始め、野生型マウスの60-70%の成長遅延を示し、16週令までにその9割が死亡する。病理学的には明らかな異常は認められない。一方、STAMの新規ファミリー分子STAM2を同定単離した。STAM2はSTAM同様、SH3及びITAM領域を有する525アミノ酸残基からなる分子量68kDaのアダプター分子であり、STAMと50.1%のホモロジーを有した。また、ITAM領域を含まない353アミノ酸残基から成るtruncated formも同定された。STAM2の各組織における発現は、STAM同様、ubiquitousであった。IL-2Rβ導入MOLT4細胞をIL-2刺激した系では、刺激後チロシンリン酸化の増強が認められた。また、STAM2もSTAM同様、JAK2/3とリガンド刺激非依存性の会合が認められた。これらの機能解析より、STAM2はSTAMとほぼ同等の機能を持つことが示唆され、STAM2によりSTAMの機能が代償されている可能性が考えられた。従って、STAMのin vivo機能を明らかにするためには、STAM2欠損マウスを作製し、ダブル欠損マウスを作出する必要があると考えられる。
|