研究課題/領域番号 |
10470089
|
研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
北村 大介 東京理科大学, 生命科学研究所, 教授 (70204914)
|
研究分担者 |
林 克彦 東京理科大学, 生命科学研究所, 助手 (20287486)
辻 佐智代 東京理科大学, 生命科学研究所, 助手 (60297629)
|
キーワード | 抗原受容体 / シグナル伝達 / Lyn / PKC / 自己免疫 / DT40 |
研究概要 |
自己抗原には反応しないという自己トレランスの機構が破綻したとき、自己免疫疾患が発症すると思われるが、その機序は未だ不明である。自己トレランスは、自己抗原と結合したリンパ球の除去や不応答によって成立するので、抗原受容体シグナル伝達の異常が自己免疫疾患につながると考えられる。実際、抗原受容体(BCR)刺激により活性化されるチロシンキナーゼLynのノックアウトマウスではB細胞反応が亢進しており、抗体産生の増加、自己抗体産生がみられ、自己免疫性腎炎等の自己免疫病を発症した。さらにLyn欠損トリB細胞株DT40を用いて、Lynは抗原受容体シグナルによるc-myc遺伝子発現誘導に抑制性に働くこと、この抑制は蛋白キナーゼC(PKC)の活性化の抑制によること、さらにこの抑制活性はLynのキナーゼ活性に非依存的であることを見出した。この新しいLynの機能は、B細胞の自己抗原に対する非特異的反応を抑制するのに寄与していると思われる。 本年度は、BCRシグナル伝達におけるPKC活性化の抑制に必要なLynの機能ドメインを同定するために、SH2およびSH3ドメインの点変異体を作製した。これらおよび野生型、キナーゼ変異型Lynの発現ベクターをLyn欠損DT40細胞に導入し、BCR架橋あるいはPMAによるc-myc発現誘導の抑制に必要なドメインの同定を試みた。その結果、Lyn欠損により増強した両刺激によるc-mycプロモーターの活性化は、いずれのLyn変異体の導入によっても野生型DT40細胞レベルまで抑制された。従って、Lynによるシグナル抑制機能にはキナーゼドメインのみならずSH2あるいはSH3ドメインの機能も必要でないことが示された。このことから、LynのN末端側のユニークドメインがそのシグナル抑制機能に重要であろうと予想される。
|