1)昨年度の研究から、アロ骨髄細胞と脾細胞移植によるマウス急性致死性GVHDモデルにおいて、パーフォリンとFasリガンドが関与していること、致死性にはFasリガンドの関与が大きいこと、抗Fasリガンド中和抗体投与により、GVHDの発症を抑制できることを示した。GVHDにおけるFasリガンドの作用点を解析するため、アロ脾細胞のドナーとして、野生型マウスを用いた群とFasリガンドの突然変異であるgldマウスを用いた群、あるいは抗Fasリガンド中和抗体投与群と非投与群の間で、皮膚傷害、消化管(小腸)傷害、血清GPT、肝の炎症細胞浸潤、脾臓リンパ球の減少などのGVHD症状に付いて比較した。その結果、gldマウスをドナーとして用いた群で皮膚傷害と消化管傷害の若干の軽減が見られた以外は、比較した2群間で明瞭な違いは認められなかった。 2)我々は昨年、Fasリガンドが好中球に富む炎症細胞(腹腔浸出細胞)に対し、アポトーシスと同時にIL-1βconverting enzyme(ICE)非依存性にIL-1βの活性化と放出を誘導し、炎症を促進することを見出した。そこでこの系で1L-1βのプロセシングに関っている蛋白分解酵素について、群特異的蛋白分解酵素阻害剤に対する感受性を解析した。その結果、Fasリガンドによる1L-1βの活性化にはカスペース以外にキモトリプシン様のセリンプロテアーゼが関与していると考えられる結果が得られた。また、膜型及び天然の可溶型Fasリガンドを比較したところ、前者にのみ炎症誘導作用が認められた。
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