研究概要 |
アルツハイマー病(以下AD)の老人斑はアミロイド・ベーター蛋白(以下Aβ)を蓄積している.このAβこそが神経毒性を有し,ADの発症に関与していることが知られているが,その詳細なメカニズムについてはいまだ不明である.最近,細胞内に存在するERAB(endoplasmic-reticulum-associated binding protein)蛋白がAβに直接結合し得る分子として新たに同定され[Yan,SD et al.Nature,389,689-695(1997)],ERABはAβによる細胞毒性を亢進させることが示された.一方,従来よりADの老人斑にトロンビンも集積することが知られている。このことは,神経細胞のトロンビン受容体の活性化がAD発症に関与していることを示唆している.そこで今回はトロンビン,Aβ,ERABの関係を明らかにする目的で,トロンビン受容体を直接的に活性化するペプチド,TRAP(thrombin receptor activating peptide)の添加実験を行った.神経芽細胞腫由来のGOTO細胞を,TRAP(100μM)を添加した無血清培地下で24時間培養した.同条件で培養開始後12時間の時点で,アミロイド前駆体蛋白(APP)については3倍以上の増加を認めたが,ERABについては変化を認めなかった.従って,TRAPはAPPを誘導するが,ERABを誘導しないことが明らかになった.現在さらに、他の蛋白(メタロチオネイン及びその類似蛋白など)がERAB蛋白の誘導に関与するか否かについて検討中である。
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