研究概要 |
私達は食物繊維の代謝産物である酪酸がp21/WAF1を活性化し、この作用はヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害効果によることを以前報告した。 本年度は、酪酸がgadd45の発現を誘導することを見い出した。gadd45は細胞周期停止およびDNA修復に関与し、またp21/WAF1同様に癌抑制遺伝子p53によって誘導される因子であることから、癌予防において重要な因子と考えられる。gadd45は他のHDAC阻害剤トリコスタチンAによっても誘導された。また、その誘導機構はp53非依存的であり、プロモーター上のOct-1 boxおよびCCAAT boxの配列を介して起こることを明らかにした。また、これらの配列を介して紫外線がgadd45の発現誘導を引き起こすことも明らかにした。p53は悪性腫瘍の約半分において失活していることから、p21/WAF1,gadd45を活性化させるHDAC阻害剤は癌の特異的予防薬になる可能性が示唆された。また、gadd45遺伝子プロモーターのOct-1 boxおよびCCAAT boxに作用しgadd45の発現を調節する薬剤も癌の特異的予防薬になる可能性があることが示唆された。 さらに、p53同様にヒト癌の約半数で失活しているp16遺伝子およびそのファミリー遺伝子p15,p18,p19遺伝子プロモーターと、p53下流遺伝子DR5,Siah-1,PUMA遺伝子プロモーターをクローニングした。そして、その調節薬剤をスクリーニングした結果、幾つかの興味深い薬剤を見い出した。これらの薬剤が新たな癌特異的予防薬につながると期待される。
|