研究概要 |
1.癌の予後に関係する重要な発癌抑制遺伝子であるp27遺伝子プロモーターを、発癌抑制効果の知られるVitamin D_3(VD_3)が活性化し細胞増殖抑制効果を示すことを明らかにした。この活性化はVD_3受容体を介さずに、Sp1とNF-Yを介していることを見い出した。この結果は、VD_3の副作用として重要な高カルシウム血症の要因となるVD_3受容体を介さない、副作用の少ない薬剤開発の可能性を示唆した。 2.食物繊維の代謝産物である酪酸がp21/WAF1を活性化し、この作用はヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害効果によることを報告した。これは、p21/WAF1プロモーターのSp1部位のSp1とSp3を介して活性化することを以前見い出していた。更に、今回酪酸が細胞周期停止およびDNA修復に関与するgadd45の発現を誘導することも見い出した。この活性化はプロモーター上のOct-1 boxおよびCCAAT boxの配列を介して起こることを明らかにした。p21/WAF1、gadd45はp53下流遺伝子である。p53は高発癌感受性集団であるリ・フラウメニ症候群の原因遺伝子であり、また、一般的悪性腫瘍の約半分において失活している。このことから、p21/WAF1,gadd45を活性化させるHDAC阻害剤は、リ・フラウメニ症候群の保因者や一般的発癌の特異的予防薬になる可能性が考えられる。 3.p53同様にヒト癌の約半数で失活しているp16遺伝子およびそのファミリー遺伝子p15,p18,p19遺伝子プロモーターと、p53下流遺伝子BAX, DR5,Siah-1,PUMA遺伝子プロモーターをクローニングした。そして、その調節薬剤をスクリーニングした結果、幾つかの興味深い薬剤を見い出しつつある。これらの薬剤が新たな癌特異的予防薬につながると期待される。
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