研究概要 |
1.遺伝子多型と無症候性脳血管障害あるいは高血圧との関連について アンジオテンシン変換酵素遺伝子(ACE,I or D)、アンジオテンシノーゲン(AGT)/M235T、アンジオテンシンII1型受容体(AT1)/A1166C、同2型受容体(AT2)/C3123Aの4種の多型のうち、AGTとAT1ではラクナ梗塞の数及び側脳室周囲高吸収域(PVH)の程度に対して有意な関連が認められた。白色人種ではG蛋白β3subunit(GNB3)の遺伝子多型(C825T)が、黒色人種では上皮性Naチャネル(ENaC)の遺伝子多型(T594M)が高血圧と関連していることが報告されている。しかし、今回の検討では、どちらの多型も家庭血圧値及び高血圧の有病率に対して有意な関係は認められなかった。 2.血圧変動性、及び高血圧のタイプと脳心血管疾患発症について 24時間自由行動下血圧測定でも家庭血圧測定でも、血圧の変動性は脳心血管疾患死亡リスクを有意に高めていた。これは、種々の交絡要因の影響を補正しても認められ、血圧変動は脳心血管疾患に対する独立した危険因子であった。また収縮期血圧と拡張期血圧のどちらが予後に強い影響を及ぼすかについては、これまで一定の結論が得られていなかったが本研究では、孤立性収縮期高血圧(収縮期血圧のみ高値)者と収縮期拡張期高血圧(いずれの血圧も高値)者では、正常血圧者より有意に脳心血管死亡リスクが増加していることを明らかとした。一方、孤立性拡張期高血圧(拡張期血圧のみ高値)者の脳心血管死亡リスクは、正常血圧者との間で差が見られなかった。以上より、脳心血管疾患死亡を予防するには、収縮期血圧を指標に治療すべきであることが示唆された。
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