研究概要 |
1-ブロモプロパンの生殖毒性が明らかにされ、それに代わって1-ブロモプロパンが職場で使用され始めている。そこで、1-ブロモプロパンの生殖毒性と神経毒性を中心に毒性及びその機序を明らかにするために、一連の動物実験を実施している。1-ブロモプロパン1,000ppm,8時間/日曝露実験では、曝露4週後から運動神経伝導速度(MCV)の遅延、遠位潜時(DL)の延長が見られ、曝露5〜7週後には後肢の麻痺、歩行障害が出現した。曝露5〜7週後に屠殺して神経の病理組織学的検索では末梢神経の軸索と髄鞘の変化が認められた。1-ブロモプロパン800ppm,400ppm,200ppm,8時間/日、12週間曝露実験では、400ppm以上の群で四肢の握力の低下、800ppm群ではMCVの遅延とDLの延長が認められ、病理組織学的にも末梢神経の変性が認められた。曝露群の精巣重量は対照と比較していずれの群も有意差は認められなかったが、400ppm以上の群で精巣上体の重量と精子数の減少、活動精子率の減少、無尾精子出現率の増加が認められ、200ppm以上の群で精嚢重量の減少が認められた。以上の実験結果は、1-ブロモプロパンが神経と雄生殖器に対して、比較的低濃度曝露でも毒性を有することを示した。雄生殖器に対する毒性については、1-ブロモプロパンは2-ブロモプロパンと作用機序が異なり、精子の成熟過程を障害する可能性を示した。現在、1-ブロモプロパンの雌生殖機能への影とその機序を明らかにするために、800ppm,400ppm,200ppm,8時間/日、12週間曝露実験を実施し、性周期への影響、卵巣の病理組織学的検索を行っている。
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