研究概要 |
これまでの知見の集積とメタアナリシスについては,まず資料収集のためにMEDLINEで感情表出(EE)と気分障害に関する論文を検索した.70論文が検索されたが,このうち家族のEEと気分障害の再発を検討していた研究は6論文であった.カンバウェル家族面接(CFI)によって家族のEEを測定していた4論文のオッズ比をペトの方法によって併合した結果,併合オッズ比(95%信頼区間)は2.7(1.2-5.9)であった.さらにFMSSで家族のEEを測定していた2論文では,併合オッズ比(95%信頼区間)は3.5(1.2-9.9)であった. 家族のEEと気分障害の経過に関するコホート研究については,地域精神保健を担っている精神病院,高知医科大学神経精神科,川崎医科大学精神科を受診した気分障害圏の患者30名とその家族を研究対象とした.対象となる患者と家族から文書によるインフォームドコンセントを得た後,主要な家族を対象にCFIを行い,EE評価を行った.評価者間信頼性を検討した結果,スピアマンの順位相関係数は批判的コメントで0.72(p<0.001)敵意で0.48(p=0.013),巻き込まれ過ぎで0.70(p<0.001),暖かみで0.79(p<0.001),肯定的言辞で1.0(p<0.001)であった.しかし,敵意と巻き込まれ過ぎでの陽性評価に関して問題が残った. ひとりの家族でも高EEと判定された場合には患者を高EE群,それ以外を低EE群として,コホート研究を行った.最初の観察期間は9カ月に設定し,治療開始後の経過を比較検討した.経過の観察にはEE評価とは独立した精神科医が当たり,1カ月ごとにハミルトンうつ病評価尺度,およびうつ病診断調査票を用いて気分障害の症状評価を行った.その結果,家族のEEと気分障害の経過は有意に関連していた.
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