研究課題
基盤研究(B)
グラスウール、ロックウール、セラミックファイバーの3種類の非晶質繊維とチタン酸カリウムウィスカーの結晶質繊維1種類の計4種類の機能性人造繊維を試験繊維とし、各繊維の健康へ及ぼす影響を評価するために、下記の事項について検討し、有益な成果を得た。1.まず、各繊維の物理的、化学的、幾何学的特性を明らかにするために、繊維の径・長さ(電顕)、不溶性(蒸留水、疑似体液)、表面特性(構造、ゼータ電位)、比表面積、真比重、化学組成を分析した。2.次に肺内に侵入した繊維の肺内耐久性を調べるために、グラスウール、ロックウール、セラミックファイバー、チタン酸カリウムウィスカーを2mgずつ実験動物の気管内に注入し、3ヶ月後に解剖し、低温灰化後、肺内滞留繊維量をICP発光分析装置で定量し、肺からの排泄速度を求めた。その結果、排泄速度は、チタン酸カリウムウィスカー=セラミックファイバー<ロックウール<<グラスウールの順であった。3.2の結果から、吸入性で、最も生体影響が強いと予測されたチタン酸カリウムウィスカーについて長期および短期の吸入曝露実験を実施し、次の結果を得た。1)チタン酸カリウムウィスカは、生体内に取り込まれると極めて溶けにくい物質で、取り込まれたファイバーは肺部に、長く残留することが実験から明らかになった。2)チタン酸カリウムウィスカは、肺内に長く留まるために、肺組織に線維化が生じ易いことが認められた。3)肺内に沈着したチタン酸カリウムウィスカの肺からの半減期は、3.5ヶ月であり、肺に線維化等障害がある場合には、更に半減期は長くなり、本実験では、15ヶ月という結果が得られた。4)チタン酸カリウムウィスカの発癌性については、本吸入曝露実験からは、確認されなかった。5)本実験で用いたチタン酸カリウムウィスカの吸入曝露濃度1.9mg/m^3は、作業環境での管理濃度2.9mg/m^3に比較して低いにも係わらず、曝露されたラツト全匹に線維化が起こっており、もし人に曝露した場合には、塵肺になる懸念があり、充分に注意した取扱が望まれる。
すべて その他
すべて 文献書誌 (32件)