研究概要 |
今年度は、昨年のマウスの結果と比較するため、以下の3点について検討を行った 1)ディーゼル排気(DE)の精子形成過程に及ぼす影響: ラットにディーゼル排気微粒子(DEP)濃度として、1時間平均値として0.3,1.0及び3.0mg/m^3の濃度のディーゼル排気(DE)を1日12時間ずつ、7.5ヶ月間吸入させた。(その為、日平均値は0.15,0.5及び1.5mg/m^3となり、低濃度群の濃度は大都市部では日常的に発生するレベルである)。その結果、ラットでは精子産生能力は0.30および1.0mg/m^3群でそれぞれ38%と41%の低下を示した。しかし、3.0mg/m^3群では31%の低下に留まり、高濃度になると量-反応関係は失われていた。 2)ディーゼル排気(DE)のラットの精巣の組織形態に及ぼす影響: DEに7.5ヶ月間暴露したラットの精巣を光学顕微鏡で形態観察したところ、わずかに精巣ライディツヒ細胞損傷と精細管の退行性変化が認められた。一方、精子形成の場であるセルトリ細胞はインヒビン-αの抗体で染色したが顕著な変化は認められなかった。 3)ライディッツヒ細胞の3β-hydroxysteroid dehydrogenaseレベルの検討: ライディツヒ細胞傷害の生化学的事実を調べる為、3β-hydroxysteroid dehydrogenaseレベルの変化を調べたところ、正常細胞には見られない空胞化細胞の出現がみとめられた。 これらの事実から、ディーゼル排気の精子産生能の低下は、DEP中のいずれかの成分が精巣のライディツヒ細胞に損傷を及ぼし、精子の産生と成長に必須な男性ホルモンの合成か、ホルモンの機能発現損傷かを起こしているものと考えられた。
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