研究概要 |
抗好中球細胞質抗体(ANCA)の対応抗原として、我々は初めてhigh mobility group非ヒストン核蛋白質HMG1およびHMG2を同定した(Sobajima J.,Ozaki S.,et al.:Clin.Exp.Immunol.107:135-140,1997)。本研究では、HMG1/HMG2の細胞内動態とその難治性炎症性疾患における病因的意義の解析を行なった。 まず本年度には、血管炎をはじめ種々の炎症性疾患における抗HMG1/HMG2抗体の出現頻度を解析した。その結果、本抗体は全身性リウマチ疾患(Uesugi H.,Ozaki S.,et al.:J.Rheumatol.25:703-709,1998)のみならず、炎症性腸疾患(Sobajima J.,Ozaki S.,et al.:Clin.Exp.Immunol.111:402-407,1998)や自己免疫性肝疾患(Sobajima J.,Ozaki S.,et al.:Gut,in press)の一部で高頻度に検出された。本抗体の疾患特異性は認められなかったが、陽性率の極めて低い炎症性疾患も存在したことから、本抗体の出現には何らかの共通の病態の関与が示唆された。 一方、抗HMG1/HMG2抗体のエピトープマッピングを行なった。その解析の結果、全身性リウマチ疾患、炎症性腸疾患、自己免疫性肝疾患のいずれの疾患においても、HMG1の84-88およびHMG2の83-88のアミノ酸がエピトープの一部であることが推定された(投稿準備中)。この部分はボックスA(1-76)とボックスB(88-164)をつなぐリンカー部分(76-88)の一部であり、HMG分子の核内局在シグナルに重要な部位である。この知見は抗HMG1/HMG2抗体の生物学的意義を考察する上で重要な成績であった。 さらに、次年度に向けて、可溶性HMG1の測定系の開発や、骨髄球系の細胞分化とHMG1/HMG2の抗原性との関連の解析も進行中である。
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