HMG1/HMG2の難治性炎症性疾患の病因・病態における意義を明らかにすることを最終目的として今回以下の項目を検討した。 【encircled 1】各種細胞におけるHMG1とHMG2の機能と細胞内局在の分子機構を解明する目的で、好中球とリンパ球におけるHMG1・HMG2の存在様式が異なる事を以下の方法によって証明した。好中球とリンパ球における、抗HMG1/HMG2抗体への抗原性の違いを間接蛍光抗体法およびWestern blottingにより示した。この抗原性の違いは、前骨髄性白血病細胞株HL60の好中球への分化誘導前後の抗原性の違いに類似することも証明した。この抗原性の違いが、細胞質、核、細胞外への分泌などの局在の違いを規定する分子機構と関連するのかどうかの検討中である。 【encircled 2】HMG1・HMG2の未知の機能の検索とその制御機構を解析する目的で以下の実験を行った。マウス胆管細胞上皮、ヒト胆管癌細胞株に対し、in vitroでHMG1は特異的細胞増殖増強作用を示した。この作用はモノクローナル抗体でブロックされ、さらには、HMG1が胆管上皮細胞に結合していることも標識HMG1を用いて証明した。in vitroでもHMG1が胆管上皮特異的に増殖増強作用を示すことを証明した。現在、HMG1が胆管上皮細胞の細胞内シグナルを変化させることができるかどうか、細胞表面にHMG1に対するレセプターが存在するかどうかの検討中である。 【encircled 3】HMG1とHMG2のヒト難治性炎症性疾患の病因・病態における意義を明らかにすために、抗HMG1/HMG2抗体を全身性リウマチ性疾患、炎症性腸疾患、自己免疫性肝疾患のそれぞれの患者において測定し、自己免疫性肝炎で極めて高抗体価、高頻度に検出されることを見い出し、報告した。また、自己免疫性肝炎を始めとする自己免疫疾患における抗HMG1/HMG2抗体のB細胞エピトープの解析の結果、大半の患者血清が、HMG1/2のリンカー部分を認識することが判明した。この部分はHMGタンパク質が核内移行するのに大切な部分であることから、抗HMG1/HMG2抗体の自己免疫疾患の病態への関与が示唆された。さらに、分泌されたHMG分子の定量システムをSandwich ELISAにより測定するために、モノクローナル抗体や、ウサギ抗血清を、それぞれ数種類準備した。現在システムの構築中である。
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