研究概要 |
全身性エリテマトーデス(SLE)では抗DNA抗体をはじめとする自己抗体の産生が特徴的だが、その産生機序の詳細は明らかではない。我々はこれまでにSLE患者での抗DNA抗体産生にはBリンパ球レベルでのレセプターエディティングの不調が関与することを示した。レセプターエディティングが正しく起こるためにはrecombination activating gene,RAGの発現が必要である。これまでRAGの発現はプレB細胞や未熟B細胞に限られており、一旦発現された細胞表面免疫グロブリンの抗原特異性はその細胞が死ぬまで変わらないと考えられていた。今回の検討から、正常者末梢血Bリンパ球においても平均50パーセント以上の細胞においてRAGが発現されることとそれに伴い免疫グロブリン遺伝子の再構成が起こることが明らかになった。さらに一部のrecombinationが不成功に終わった細胞では細胞死に陥ることが明らかになった。即ち正常者成熟Bリンパ球では活性化に伴いRAGを発現し、細胞表面免疫グロブリンの特異性を変え(レセプターエディティング)、更にアポトーシスを誘導することがわかった。 一方、SLE患者では末梢血Bリンパ球自体ではRAGの過剰発現が認められることを見いだした。しかし、抗DNA自己抗体産生B細胞のみを精製してそのRAG発現を調べると、この細胞では刺激・非刺激に関わらず全くRAGを発現しなかった。即ち抗DNA抗体産生B細胞では、レセプターエディティングもアポトーシス誘導も起こらないことが明らかになった。今後、自己抗体産生Bリンパ球にうまくRAG発現を誘導することが自己抗体産生の抑制につながるのかを検討する必要がある。
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