消化器癌では正常粘膜から癌化に至るまでの過程を観察できることが多く、段階的に生じている遺伝子変化を同定することが診断及び治療の上でも大切である。本研究では発がんを抑制する作用を有する遺伝子座として染色体欠失領域をゲノムワイドに探索し、含まれる遺伝子群を体系的に同定し、消化器癌発がんへの関与について解析することを目的とする。 (1) 胃癌 胃癌細胞株OCUM-2Mの亜株として腹膜播種を来すようになった胃癌細胞株OCUM-2MD3を用いて、その過程におけるゲノム変異を検出するべく体系的な解析を行った。 1) RDA(Representational Difference Analysis)法によるゲノムサブトラクションにより・染色体3p14、1p22-23及び16q22-23に染色体ホモ欠失領域が検出された。 2) 1p22-23領域よりホモ欠失を来しているゲノム領域が同定され、同領域より新規遺伝子ZAP1を単離した。また、ZAP1と類似するZAP2遺伝子が9qに存在し、ともに細胞外基質を形成するタンパク分子であると推定されることから、がん細胞の播種を引き起こす機構に関与するとともに、アポトーシス誘導を回避する機構に関与することが考えられる。 3) 16q22-23領域における重複するホモ欠失変異を5つの癌細胞株で同定できた。同領域に細胞増殖を抑制するシグナル分子の存在が考えられる。 (2) 膵癌 膵癌細胞株を用いてサブトラクションを行い、ホモ欠失の有無を解析中である。 (3) 大腸癌 ミスマッチ修復異常とアポトーシス誘導の関連について検討している。
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