がん細胞において生じる遺伝子異常をゲノム及びトランスクリプトームの両面から包括的に解析を進めてきた。ゲノム解析においては、胃癌細胞株 OCUM-2Mおよびその腹膜播種転移性株2MD3、において3カ所の染色体ホモ欠失領域を同定し、新規遺伝子ZAP1の単離を行い、機能解析を進めている。トランスクリプトーム解析については、オリゴヌクレオチドアレイ(GeneChip、Affymetrix 社)による遺伝子発現レベルの解析を進めてきた。第一に、SAGE(Serial Analysis of Gene Expression)法との比較によりオリゴヌクレオチドアレイ法の定量性を検討した。SAGE法はcDNA由来の10塩基のタグの出現頻度を数えることにより、遺伝子の発現レベルを定量的に解析することができる。GeneChip法の発現強度とSAGE法の出現頻度との比較を行ったところ、大変よい相関が得られた。オリゴヌクレオチドチップ解析においては、対照検体なしに発現レベルをモニタリングできるので、組織間の発現量を比較しやすいと考えられる。具体的には、上記の細胞株に加えてリンパ行性転移性株2MLNにおける発現プロファイルも比較検討中である。一方、臨床検体としても原発巣およびリンパ節転移組織における発現プロファイルの比較を in vitro のデータとも比較しながら進めている。 なお、遺伝子発現の組織特異性については、GeneChip データとともにSAGEデータを統合することにより、遺伝子毎に種々の細胞や臓器での発現レベルが一覧できるようなデータベースを構築中である。現在、がん細胞及び癌組織を用いてのGeneChip解析に着手している。
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