研究概要 |
本研究においてはゲノム全体を対象として遺伝子に生じた質的及び量的異常を解析することにより癌抑制遺伝子同定を行い、多段階発癌機構の解明を試みることを研究課題として掲げた.第一にDNAサブトラクション法であるRepresentational Difference Analysis(RDA)法(Lisitsyn,1993)を用いて、多段階発癌過程における染色体ホモ欠失領域の同定をはかり、癌抑制遺伝子座のクローニングから癌抑制遺伝子の同定をめざしてきた。胃癌細胞株OCUM-2Mおよびその高播種性転移株2MD3および2MLNを用いた解析により、1p、3p14、16q22の3カ所のホモ欠失領域を同定した。3p14、16q22の領域は染色体脆弱部位FRA3BおよびFRA16にあたり、それぞれFHIT、WWOX遺伝子が存在することが判明した。1p領域よりは新規コラーゲン類似遺伝子ZAP1がクローニングされ、全ゲノム構造を決定した。スプライシング変異およびフレームシフト変異が確認されている(未発表データ)。 第2に、DNAアレイ解析により発現変異を来している遺伝子群を網羅的に検索し、上記の細胞株において、40,000個の遺伝子あるいはEST(Expressed Sequence Tag)を解析し、2MD3では扁平上皮系遺伝子群の発現抑制、2MLNではMHCクラスII遺伝子群の発現亢進が認められた。転移性亢進との因果関係について現在検討を進めている。 同様に、分化度の異なる肝細胞癌症例を8例ずつDNAチップによる発現プロファイル解析を行い、肝細胞癌の脱分化に関連する遺伝子群の同定を行い、進行度の診断・分類に有効であることがわかった。
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