研究課題
基盤研究(B)
HLAの多型性が肝病変の発生・進展と関連するか否かをC型慢性肝炎患者において検討すると、HLA class IのB54を含むhaplotypeが肝病変の進展を促進すること、他方class IIのDRB1*1302-DQB1*0604を含むhaplotypeが肝病変の進展を抑えることが明らかとなった。Fas抗原/Fasligand系によるapoptosisがC型肝炎における肝細胞障害機序に関与すると考えられているが、血清可溶性Fas抗原の上昇は、肝細胞におけるFas抗原発現の程度、肝病変の炎症の程度を反映しており、肝炎の活動性を示す新しいマーカーになりうる可能性が示唆された。C型慢性肝炎に対するインターフェロン(IFN)治療後の発癌に寄与する項目はIFN治療無効例、高年齢、男性で、IFN治療にてトランスアミナーゼの正常化が認められる再燃例では累積肝細胞癌併発率が著効例と同等で、無効例に比し有意に低率であることを明らかにした。以上より、C型慢性肝炎に対するIFN治療にてHCVの排除のみならず、一時的にでもトランスアミナーゼの正常化を来すことができれば、来るべき肝発癌を阻止するという目標を達成しうると考えられた。肝細胞癌組織においてMAPK/ERKの活性化の有無を検討すると、MAPK/ERKは58%の肝細胞癌患者において活性化されており、その活性化の程度は周辺非癌部肝組織に比し肝細胞癌組織において高値であった。また、MAPK/ERKの活性化の程度はc-fosの蛋白発現の程度と正の相関関係を有し、c-fosとcyclin Dlの蛋白発現のみならずMAPK/ERKの活性化とcyclinDlの蛋白発現の間にも正の相関関係が認められた。さらに、癌部/非癌部のMAPK/ERKの活性化比は腫瘍径と相関関係がみられた。以上、MAPK/ERKの活性化が肝細胞癌の進展に関与していることが明らかとなった。これらの研究成果は、新しい肝細胞癌の遺伝子診断開発への基礎となると考えられた。
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