ラット初代培養肝細胞に肝細胞増殖因子(HGF)を添加し、Northern blotを行ったところ、添加24時間後にサイクリンD1 mRNAの発現増強が認められた。 ラットgenomic DNAライブラリーをラットサイクリンD1 cDNAをプローブに用いてスクリーニングし、6個のクローンを単離した。それらのマッピングを行い塩基配列を決定したところ、その中の1つのクローンにはサイクリンD1遺伝子5'上流-5 kb からエクソン3までが含まれていた。 このクローンから5'上流領域を含む約6 kbのDNA断片を単離し、さらに種々の長さのラットサイクリン遺伝子5'上流領域を、ルシフェラーゼ遺伝子の上流に挿入したレポータープラスミドを作製した。 サイクリン増強が確認されているラット肝癌細胞dRLh84にこれらのレポータープラスミドを導入し転写活性を検討したところ、-2.6から-1.5 kbの間に強い転写活性が認められた。現在、この領域に存在する転写調節領域を同定する目的で、dRLh84細胞およびHGFを添加したラット初代培養肝細胞の核抽出物を用いてDNaseIフットプリンティングを行っている。 今後は、同定された転写調節領域からサイクリンD1の転写調節メカニズムを明らかとし、HGFに代表される増殖因子に誘導される転写因子の同定を進めていく予定である。
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