研究概要 |
IFN治療と肝発癌抑制:インターフェロン(IFN)投与終了後一年以上経過したC型慢性旺炎1211例(F1 164,F2 678,F3 369例)、肝硬変(F4)45例の計1256例を平均4年フォローし、74例に肝癌が発生。IFNの治療効果は著効(SR)、一過性有効(TR)、無効(NR)に分類。74例の肝癌の内訳はF1から0,F2から14例(TR2,NR12)F3から39例(SR4,TR8,NR37)F4から11例(TR2,NR9)。F2,F3,F4のNRからの年率肝癌発生率は0.9%,3.8%,5.9%で、線維化の進展に比例し発癌率は有意に増加。累積肝癌発生率はSR,TR共にNRに比して有意に低率。3.5年以降SRからの肝癌症例は無かったが、TRでは終了4.5年以降肝癌発生率が上昇し、TRでの肝発癌抑制効果は4-5年位と考えられた。我々の肝癌の発育成長に関する研究から、1個の肝癌細胞が直径1cmの肝癌になるのに10年は要し、C型の肝癌の多くはF2,F3の時期に発癌しているものと推測される。 HCV dynamicsの研究:上記の研究から、IFN治療成績の向上とTR例に3-4年毎にIFNを投与する事が肝発癌抑制に繋がると想定。IFN治療でのSRの予測因子は判明しているがTRの予測因子は不明。我々はIFN投与時のHCV dynamicsの研究を行い、IFN連日投与時には血中HCVの24時間以内の半減期(first phase)は平均5-7時間で,24時間以降の半減期(second phase)は約10倍長い事を証明。しかし、dynamicsの解析はTRの予測因子にはならなかった。 C型肝癌におけるHBVの関与の可能性:HBVの既感染(HBs抗原陰性、HBc抗体低力値陽性)を有するC型肝癌でのHBV DNAの存在とHBV遺伝子組み込みを検討。肝組織ではPCRで半数以上の例でHBVDNAは陽性であったが、genomic southern法とより高感度のAlu-PCR法で遺伝子組み込みを調べたが、全例遺伝子組み込みはなく、C型での肝発癌におけるHBVの関与の可能性はほどんど無いと思われた。
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