研究概要 |
1)C型慢性肝炎のインターフェロン(IFN)治療の肝発癌抑制:1256例の慢性肝炎(F1;164,F2;678,F3;369,F4;45例)の治療成績は著効(SR),一過性有効(TR)、無効(NR)に分類し、SR率はF1,F2,F3,F4で40,30,20,5%で、病期が進展すると治療効果は低下した。平均4年間のフォローで74例に肝癌が発見され、F2から14(TR;2,NR;12),F3は49(SR;4TR;8,NR;37),F4は11例(TR;2,NR;9)で、各病期(stage)のNRの年率発癌率はF1からF4までそれぞれ、0,0.9,3.8,5.9%でF3の段階で高率に癌が発見された。全体ではSRのみならずTRでもNRに比して有意に発癌が抑制された。しかし、F3,F4では年率発癌率にTRとNRで有意差はなく、病期が進展するとIFNの発癌抑制効果は低下した(J Hepatol 30:643-659,1999)。また、肝癌細胞の移植実験と臨床例のdoubling timeの検討から、1個の癌細胞が直径1cmの肝癌に成長するには10年前後を要する事が判明し(Exp Cell Res246:412-420,1999)、発癌抑制対策にはこの点の考慮が重要と考える。 2)IFN投与時のHCV dynamics:IFN投与24時間以内(first phase)のHCVの半減期は5-7時間で、それ以降の半減期(second phase)は約10倍長く(J Infect Dis 177:1475-1479,1998)、前者はIFNの抗ウイルス効果を後者は抗ウイルス効果と細胞性免疫能を反映しており、IFN治療効果の向上には抗ウイルス効果とともに、細胞性免疫能を上げる薬剤の併用を考慮する必要がある。 3)HBV遺伝子組み込み:HBV遺伝子組み込みは一過性の急性肝炎でも起こり得る事、慢性肝炎では100%ある事、またHBVの既感染を有するC型慢性肝炎では約20%に組み込みが見られる事を明らかにした。しかし、HBVの既感染を有するC型の肝癌ではHBVの組み込みはなく、C型肝癌の発癌にHBVの既感染は関与していないとの結論を得た(submitted)。
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