わが国の肝癌の95%はB型あるいはC型肝炎ウイルスの持続感染が原因であり、B型・C型慢性肝炎の治療法の改善と発癌機序の解明を目指し研究した。核酸誘導体lamivudineはB型肝炎に有効であるが、長期投与でlamivudine抵抗性ウイルスが高率に出現する事が問題である。我々はPNA-mediated PCR clampingとRFLPを組み合わせ、lamivudine抵抗性ウイルスを超高感度に検出する系を開発した。その結果、lamivudine投与6か月後には約50%の症例に本剤抵抗性のウイルスが出現するが、breakthrough hepatitisを起こすのはその6か月前後後である事も判明した。また、Alu-PCRでの検討から、B型肝癌18例中6例で細胞増殖などに関連した部位にHBV遺伝子組みこみがみられ、従来考えられていた以上に高頻度にHBV遺伝子組みこみが肝発癌に関与していることが示唆された。 C型慢性肝炎はIFNで約30%は完治し、約25%は一過性有効を示す。IFN治療を受け長期フォローしえたC型慢性肝炎1370例の解析から、著効例はもとより一過性有効例でも無効例に比し有意に肝発癌が抑制されることが判明した。また、無効例でも保存的治療で血清ALTを低値に保つと肝発癌が有意に抑制できることも明らかになった。そして、IFN治療時の血中HCVの動態を検討し、血中ウイルス量は2相性(第1相、第2相)に減少する事を初めて報告した。その後の検討から、第2相はIFNの抗ウイルス効果プラスCTLによる感染肝細胞排除機構が働いていることも明らかになった。現在IFNと核酸誘導体ribavirin併用時におけるHCVの動態を検討中である。
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