研究概要 |
δ-ALA(経口的投与)による食道静脈瘤の光線力学的治療(PDT)への臨床応用のための基礎的研究として、同じ光感受性試薬であるフォトフリン(経静脈的投与)による血管障害性を確認する目的でウサギを用いた動物実験を行った。以下に、その概要を示す。なお、この結果については、平成11年10月の日本レーザー医学会にて発表した。 <目的>食道静脈瘤に対する光線力学的治療(PDT)の臨床応用の可能性を探るためにPDT施行後の兎耳介静脈の血流変化や血栓形成などを確認する基礎的研究を行った. <対象と方法>日本白色兎(雄,体重1kg,20羽)の耳介静脈へのレーザー照射5分前に非照射側の耳介静脈からフォトフリンを各0.2mg/Kg(4羽),1mg/Kg(6羽),2mg/kg(10羽)静注した.照射側の耳介静脈3本に対しアルゴンダイレーザー(波長630nm,出力300mW,SERIES700-DYE LASER,Lexel社)で各々5分,10分,15分のスポット連続照射(照射径5mm)を行った.また,レーザー照射直前,直後,24時間後,48時間後(屠殺直前)に,レーザードプラ計(Periflux,Cannon社)で非照射側静脈(静注施行の静脈とは異なる)と照射側耳介静脈3本の血流を測定した.兎は薄暗い室内で飼育した後に屠殺し,耳介の一部を20%ホルマリン固定して標本作成し病理学的検討を行った. <結果>照射側耳介静脈において,フォトフリンは1mg/kg以上で,照射時間は10分以上で,1)血流が有意に低下し,また,2)血栓形成の頻度が増加した.なお,血流の低下は照射後24時間以上でより明らかであった. <結語>本実験の結果から,PDTはdose-and time-dependentに血流の低下と血栓形成を惹起しうることが示された.今後,PDTの食道静脈瘤治療への臨床応用の可能性が示唆された.
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