研究課題/領域番号 |
10470141
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
井戸 健一 自治医科大学, 医学部, 助教授 (80112621)
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研究分担者 |
小野 和則 自治医科大学, 医学部, 助手 (70301447)
礒田 憲夫 自治医科大学, 医学部, 講師 (30275680)
長嶺 伸彦 自治医科大学, 医学部, 助教授 (20275689)
平澤 知介 自治医科大学, 医学部, 助手 (90275686)
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キーワード | 食道静脈瘤 / 光線力学的治療 |
研究概要 |
δ-ALA(δ-Aminolevulinic acid)による食道静脈瘤の光線力学的治療(PDT)の臨床応用を目的に、血管内皮細胞を含む消化管癌のヌードマウス可移植性株化癌細胞を用いたin vitroの解析(3次元HPLCシステム)の後に、兎耳介静脈を用いたPDTの動物実験を行った。まず、光感受性試薬であるヘマトポルフィリン誘導体(フォトフリン)による血管障害性を調べた。その概要を示す。PDT施行後の耳介静脈の血流変化(機能的変化)や血栓形成など(器質的変化)を観察した。日本白色兎(雄、体重1.5-3.0Kg、20羽)の耳介静脈へのレーザー照射5分前にフォトフリンを各0.2mg/Kg(4羽)、1mg/Kg(6羽)、2mg/kg(10羽)静注した。耳介静脈3本にアルゴンダイレーザー(波長630nm、出力300mW、SERIES 700-DYE LASER、Lexel社)で各々5分,10分,15分のスポット連続照射(照射径5mm)を行った。また、レーザー照射直前、直後、24時間後、48時間後(屠殺直前)に、レーザードプラ計(Periflux、Cannon社)でレーザー非照射耳介静脈1本と照射静脈3本の血流を測定した。兎は薄暗い室内で飼育した後に屠殺し、耳介の一部を10%ホルマリン固定して標本作成し組織学的検討を行った。レーザー照射耳介静脈において、フォトフリンは、1mg/kgと2mg/kgの投与量で、照射時間は15分で、静脈の血流が有意に低下し、その頻度と程度は、照射後24時間、48時間で顕著であった。また、血栓形成でも、同様に、上記の条件下、その頻度と程度が有意に増加した。さらに、静脈鬱血(静脈径の拡大)も、フォトフリン投与量0.5mg/kgと2mg/kg(照射時間15分)の間で有意差を認めた。なお、血栓形成と静脈鬱血とは統計的に相関を示した。その他の組織所見として、軽微な浮腫や出血を認めた。次に、フォトフリンをδ-ALA(経口的投与)に変えて、同様の基礎的実験(日本白色兎、雄、体重1.5-3.0Kg、15羽)を継続したが、当初の目的であったδ-ALAによる血管障害性(血栓形成)が、フォトフリンに比較して十分には確認できなかった。今後、フォトフリンを用いたPDTにも期待し、同研究の継続、新たな展開を年度を超えて図って行きたい。
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